#635 ベルコーヒー (Komoro)

昭和45年。1970年からやっている。
コの字型のカウンターと、ボックス席が2つの小さな喫茶店。
先客は馴染み客の老婆がひとり。夕暮れ時だが、コーヒー片手に新聞を読んでいる。

小諸市で50年以上。昭和の頃からやっている喫茶店さ。
地方都市ならどこでもあるような風景だ。
自家焙煎の機械が見える。珈琲豆の焙煎販売もやっている。

そして、店内は雑然としている。おばあちゃんちに来たのかと思う。
照明は蛍光灯だ。雰囲気のよさなどない。残念な照明だよ。
でもいいのさ、そういうのは。
昔からの喫茶店だもの。

マンデリンを頼む。
ストロングテイストとフルーティーな香り。

しばらくして、2代目と思しき中年の女性マスターが素焼きのピーナツを出してくれた。
特段おしいものではなかったが、幼い頃ばあさんが炒ってくれた落花生の味に似ていた。
「日曜日はプロレスが来るのよ」
マスターは話かけてくれた。

アントニオ猪木が活躍していた頃のワールドプロレスリングをふと思い出した。
卍固め、コブラツイスト、延髄切り。
小学生だったボクは、毎週金曜夜8時から、父親とプロレスに熱狂していた頃を思い出した。
がんばれ。猪木。負けるな猪木。
スポンサーはがまかつだったなぁ。
今では、すっかりプロレスには興味はなくなってしまったが。。。
そうか。日曜は小諸にプロレスがやってくるのか。
それは、楽しみだね。みんなで見にいくと楽しいね。きっと。

会計を済ませると、外はもう黄昏時。
深まる秋にひんやりとした風が吹き、急に寂獏たる思いに襲われた。
でもそんなのよくある事。一瞬の感傷だよ。
ベルコーヒーの外観を写真に撮っていると、プロレスのポスターが目に入った。
いかにもプロレスっぽいポスターだ。
「KOMORO BOMBEYE」
気合で盛り上げたい掛け声だね。
見ると、長州小力が写っている。
小力ねぇ。
すでにプロレスに疎くなっているボクは、
「プロレスだし、小力も来るんだ。へー」
と、何を気にするわけでもなく、ぼんやりと理解して宿に戻ったのだが。
このイベントが、西口プロレスという団体だということを知ったのは数カ月経った後のことだった。

でも。いいのさ。そんなことは。
そして、ただ、いっさいは過ぎていきます。

URL***
Address長野県小諸市大手2-1-30
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Notices2024/04